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「サド侯爵夫人」感想その1 [芝居感想]

「サド侯爵夫人」。10月23日(木)・19時開演。於・グローブ座。

悉く「バラバラ」という印象である。つまり演出は何をしていたかということだ。すべてはそこに集約されるのではないか。
パンフレットを読むと、演出も役者も、戯曲や自らの役をよく分析していると思う。役者・スタッフもそれぞれ技量のある人々だと思う。しかし、芝居が立ち上がって来ない。それらを総合し、バランスを取ることが出来ていない。

パンフレットの橋本治氏を交えた鼎談では、いちいちもっともなのだ。ただ、多くを分析しているのは橋本氏だけど。
「三島の文章は意識的である。意識的に演じないと駄目だ。男が女方をやると、役にリアリティを与えるためにどうするかというところから作るが、最近の女優は自分に引きつけて考え過ぎる。女優があの通り普通の女の台詞として言うから弱くなる、薄っぺらになる。」以上、意識的ということについての言及をまとめつつ抜き出してみた。いちいち納得だ。自分も、女方の芝居を観るようになって、殊に七月の3軒茶屋婦人会の芝居を観て強く意識するようになったことだ。これは、女優と女方なら女方の方が勝れているということではなく、特に最近の女優は自分が女であるということに胡座をかいて、他者を演じるという意識がない人が多いということ。つまり、男でも女でも、同性の役をやろうが、異性の役をやろうが「他」を演じるという意識のないものは駄目だということだ。
また、台詞は音楽であるという考え方。橋本氏曰く、やる方は「台詞の七割がたが必要な三割を導き出す為の助走。台詞の意味ではなくて、うねり・リズムをとらえる」。観る方は「聴きながら観て、先入観が歪み、『ああ、こういう芝居だったのか』と気がつく。さらに怒濤のごとくイメージを伴う台詞が流れ込むから、お客さんの頭の中に何かが見える。その台詞と自分自身の何かかが結びつく瞬間がある」「これを観てテーマを考えるなんて、野暮の極みで、これは、『自分はこうだったのか、生きるってこういうことか』と思考をプッシュしてくれる芝居」。篠井さん曰く、「他者が演じたものを観れば『私の中にもあるかも』となる、『フィクショナルなリアリティ』」。ちょっと「台詞=音楽」の話からは遠ざかるが、「台詞=意味のみ」ではなくということで、これらの話も肯ける。
テント芝居をしていたせいか、これらのことは、無意識に意識していたという感じだ。自分がやることから離れて、色々な芝居を観て、客観的に捉えらえられるようになった。なので、このパンフレットの鼎談は、自分にとって興味深いものだった。
さて、その最後、良い演出はという話の流れで、橋本氏曰く、「演出が見えないのが、一番良い演出だと思うな。飾り過ぎたりやり過ぎたりすると、役者がその部分で死ぬんです。~中略~あとは役者のバランスがきちんと取れていればいい」と。これに演出の鈴木氏も同意で、「主張しない表現・演出」が自分の目指すべきところだと結論づけている。

では、どうだったか。バラバラで、バランスなど取れていなかったのだ。
何をやりたいのだろう。とてもじゃないけど、「芝居」を見せたいようにはみえない。女方・篠井英介だけを見せたいのだろうか。だったら、他の方法がいくらでもあるだろう。他にも役者を集めて、芝居をやる必要はない。それこそ、ディナーショーでもやればいい。また、今回は篠井さんと加納さんの女方対決みたいのも売りだったようだが、本当に芝居が喧嘩してどうするのだろう。技の出し合いみたいで、芝居として成立していない。話題の舞台だったので演劇関係者も数多く観に来ていたようだが、玄人受けすればいいのか。芝居が成立しなかったら、あれだけの役者なのに、二人とも全く魅力が出ていない。そりゃあ、技は凄いけれども、だったらやっぱり芝居にする意味がないし、二人が共演する意味もない。

「主張しない表現・演出」は結構なんだけど、何か間違ってはいませんか。憶測でしかないのだが、芝居全体を客観的に見るとか、全体の流れを観客の呼吸や間で考えるとかしていないのではないのだろうか。すべて役者自身の間のままなのではないだろうか。そうでなければ、あのバラバラ感はありえない。そりゃあ、役者は気持ちいいだろうけどね。

しかし、これで、初演の「欲望という名の電車」を観たときのイライラに決着がついた。当時は分析出来なかったから。

以上、全体的な話。細々と書きたいことはまだあり。
次号へ続く。
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